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知っておきたいWebサイト関連の法律知識
- 2024.03.07
- knowledge
Webビジネスを展開していく上で担当者が身につけておくべき知識は幾つもあります。例えばマーケティングやクリエイティブのように自社や商品の知名度や魅力を最大化するための知識は「攻めの知識」と言えるでしょう。
一方で、トラブルから身を守るために必要な「守りの知識」もあります。代表的なものが法律知識です。Webが広く一般化された現代においては、思わぬところで法律や他者の権利を侵害してしまう、あるいは自社の権利が脅かされるリスクが生じうるため、これからのWeb担当者は法律もカバーしていくことが求められてきているのです。
そこで今回は、Webビジネスを展開していく上で知っておきたい法律知識を紹介していきます。普段何気なく取っていた行動が実は権利侵害になっていた…ということもありえますので、日々の運用を見直す参考にもしてみてください。
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まず知っておきたい「知的財産権」
個々の具体的な法律について触れていく前に、Web制作などクリエイティブな仕事に関わる人々が知っておくべきものとして、「知的財産権」があります。知的財産権とは、人間が行う知的な創作活動を通じて生まれた財産的な価値を持つ成果(著作物やアイディアなど)に対して、一定期間の権利保護を与える権利の総称です。
知的財産権は、著作権、産業財産権、その他の権利 と、大きく以下の3つに分類することができます。
著作権
小説や漫画、音楽や美術品など、何らかの著作物が対象となる権利で、著作権法によって著作者の利益が守られることになります。
著作権法は文学・美術・音楽・映像など様々な著作物に適用されます。これらはすべて著作者に権利が帰属する著作物です。
権利の保護期間は一般的に著作者の死後50年間が一般的ですが、国によって異なります。
Webサイトを制作するとき、一番身近なのが”著作権”かと思います。
コンテンツに使用する画像やイラストは、著作権で保護されている可能性が高いです。
イラストや写真など、ネット上には”フリー素材”と呼ばれるものがありますが、どんな使い方をしてもOKということではなく、なかには商用利用の禁止や改変の禁止という条件がある場合も多いのです。”フリー素材”と呼ばれるものでも使用する際は、必ず利用条件を確認が必要です。
産業財産権
新しい技術やデザインといったものの模倣を防止するために独占的な権利を与えるもので、製品開発や研究開発へのインセンティブを付与することで、産業の発展を図ることを目的としています。発明等の権利を保護する「特許権」、製品の形状や構造などに関するアイディアを保護する「実用新案権」、製品やWebサイトのレイアウトなどデザインに関する権利を保護する「意匠権」、商品やブランドなどのロゴやネーミングなどを保護する「商標権」の4つがあります。
その他の権利
上記2つに分類できないもので、植物品種を保護する育成者権や、半導体集積回路に関する回路配置利用権などがあります。
Webサイトの場合、企業や商品ロゴといったものは商標権に該当します。またWebサイトのレイアウトやデザインは意匠権に関係するものですし、写真や動画やテキストといったものは著作権に当たります。
例えば、「個人のWebサイトやSNSで公開されていた写真を企業が勝手に使用した」「自社の商品画像が第三者に無許可で使用されてグッズ等を勝手に作成・販売されている」といった問題はよく起きがちなものです。
このように、Web制作者やWeb担当者にとって基本的なビジネスツールであるWebサイトにも様々な権利が発生しています。そのことを知らずにいると、知らないうちに他者の権利を侵害してしまっていたり、自社の権利が脅かされていることに気づかずにいてしまったりすることがあるのです。そうした事態を避けるためにも、Webに携わる人々は知的財産権の概要は理解しておきましょう。
●実際にあったトラブル事例
・制作編集可能データの納品有無にまつわるトラブル
サイト公開後に、自社で運用するためにバナー画像など編集可能なデータの提供を制作会社に求めたが著作権は制作会社側にあるため、提供不可と言われてしまった…ということも。画像データなどを利用する際ははじめにどのような契約なのか確認しておきましょう。
■著作権についてはこちらでも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
無意識のうちに権利侵害しないために!知っておきたいネットと著作権の関係
Web運用を行う上で知っておくべき法律
上記した知的財産権にまつわる法律以外にも、Webビジネスに関係する法律は幾つもあります。それぞれの法律の概要と、Webビジネスの場合にはどんなシーンで関係してくるか紹介していきます。
個人情報保護法
氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスといった個人に関する情報は、ビジネスや行政サービスなどの質の向上や効率化を図るために有用なものですが、一方で悪用されると個人に多大な被害をもたらしうるものでもあります。そのため、個人の権利や利益を保護するための法律として作られたものが個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)です。
Webビジネスの場合、ECサイトで製品を購入する際や何らかの問い合わせをする際に利用者は個人情報を入力しますが、上述のように直接個人を特定できるようなものだけが該当するわけではありません。
条文の中では「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と定められており、例えば個人を特定できなくともユーザーIDと購買履歴のデータを統合すれば個人を識別することはできるため個人情報となります。
また、ユーザーの入力したデータや行動履歴等を保存するクッキーデータも、それ単体では個人を識別することはできませんが、他の個人情報と紐付けると特定の個人を識別できるようになることがあります。そのため、2022年に個人情報保護法が改正された際にはクッキーデータも規制されるようになりました。
こうした背景から、個人情報を取り扱うWebサイトでは、企業として個人情報の取り扱い方法などについて定めた「プライバシーポリシー」ページの制作が義務付けられています。ただしプライバシーポリシーを掲載していれば利用者が個人情報の収集に同意したわけではないということには注意しなくてはなりません。
チェックボックスを用意し、利用者が自発的に同意したことを示してもらうことも必要となるのです。
特定商取引法
事業者による悪質な勧誘や取引行為を防止し、消費者の利益を守ることを目的とした法律が特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)です。この法律は訪問販売、電話勧誘販売、通信販売、特定継続的役務提供契約(エステや語学教室など)、マルチ商法などが対象となります。
Webビジネスで特に関わりが深いのは通信販売で、ECサイトには事業者情報(名称、住所、電話番号、営業時間等)、価格・商品の引き渡し情報(価格、支払い情報、引き渡し時期、送料等)、返品・交換情報(不良品等があった場合の対応について)といった情報の表示が定められています。
また、学習教材などのように継続的に提供と支払いが前提の商品・サービスにも注意が必要です。継続契約が必要なことを意図的に隠すのはもちろんのこと、サイト内に情報を掲載していてもそれが消費者に伝わりにくい形になっているとトラブルに発展してしまう可能性があるため、情報掲載の仕方にも十分に配慮が必要であることを知っておきましょう。
特定電子メール法
広告や宣伝を目的とした迷惑メールや、利用者の同意を得ない広告・宣伝メールの配信を規制しているのが特定電子メール法(正式名称:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)です。
昨今、多くの企業が、商品やサービスの利用者に継続的な接触を図るためにメールマガジンを送るメールマーケティングを実施していますが、そうしたメールを送る際も必ず事前に利用者の同意を取っておかなければなりません。
また、送付するメールには発信者の情報や配信停止方法などを明記することも義務付けられています。なお、商品・サービスの不具合やメンテナンスに関する情報など、広告宣伝を目的としたものではなく、かつ通達しないと利用者に不利益を与える恐れのある情報に関しては、事前の同意はなくとも送信することができます。
薬機法
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品など、人の健康に多大な影響を及ぼす可能性のある商品やサービスは、国が承認していない効果・効能を宣伝することは禁止されています。それを定めているのが薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。
実際には効果効能が認められていない商品の効果効能を謳うのはもちろんのこと、効果効能があっても国からの承認を得られていなければその情報をPRすることはできません。国の承認を得られていたとしても、「必ず効く」「絶対に治る」といったような誇大な表現を用いることもできません。
事業者が情報発信する場合だけでなく、メディアや個人ブロガーなどの第三者を通じて商品紹介をする際にも薬機法は適用されます。例えば、記事作成を個人ブロガーに依頼し、そのまま薬機法に沿ったチェックせず違反表現を掲載すると、罰金刑や懲役刑、売上に対する4.5%の課徴金も課されますし、なによりも企業としての信頼を失うことになります。
人体に影響を及ぼす可能性があるものだけにその取り締まりは厳しく、中には逮捕者も出ています。そのため、薬機法に関連する商品・サービスを提供する際には最大限の注意が必要となることを理解しておきましょう。
景品表示法
消費者が商品・サービスを選択する際には、自主的で合理的な選択がなされなければならず、不当な広告や過大な景品を通じて消費者を誘引したりすることは禁止されています。それを定めているのが景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)です。
景品表示法では、商品・サービスを紹介する際、実際よりも良いものとして見せるために品質やスペック、価格といった情報を誤認させる形で発信すること(優良誤認表示)や、商品・サービスを一定期間割引と称して販売しておきながら、実際には謳っている期間以上に割引をしていたりすること(有利誤認表示)などは禁止されています。
Webビジネスの場合、実際にはそうではないのに「日本唯一」「世界No1」といった表示をしてしまうと景品表示法に抵触する可能性があります。また、顧客を誘引するために商品やサービスの価値を超えるような景品(おまけ)を付けるような行為も禁止されています。
景品表示法の中でも特に注意が必要となるのが、ステルスマーケティング(ステマ)に関してです。
広告であることを隠して商品・サービスを宣伝する手法であるステマは、消費者の自主的で合理的な選択を阻害するものであることから、2023年10月以降規制対象となりました。そのため現在では、芸能人やインフルエンサーを通じて商品・サービスを宣伝したり、メディアに記事広告を出稿したりする際には、PR表記を付けて広告であることを明示しなくてはなりません。
インフルエンサーにPRを依頼する際、代理店を利用する企業も多いと思いますが、悪質な代理店がわざとインフルエンサーに対して”PR表記不要”と説明して投稿させ、企業担当者が知らない間に不適切な投稿がされていた…というトラブルも起きており注意が必要です。
不正競争防止法
ビジネスを展開する上で、事業者は競合他社と公正な競争を行わなければなりません。しかし、他社の商品やブランドを盗用したり、類似の表示をして消費者を混同させるなど不正な形で競争しようとするものもいます。そうした行為を禁止するものが不正競争防止法です。この法律の中では、どのような行為が不正競争に当たるかも定義されています。例えば「周知表示混同惹起行為」というのは、広く認識されている既存の商品やブランドと似た商品を作り、消費者を混同させる行為です。また「ドメイン名の不正取得の行為」は、有名企業のドメインに似せたドメインを取得する行為です。類似したドメインの取得は、既存企業の権利を侵害し、消費者を混乱させることから、禁止されています。
その他、既存の有名商品・ブランド等を自社商品の表示に使うこと(著名表示冒用行為)や、商品の原産地、品質などを誤認させるような表示(誤認惹起行為)なども禁止されています。これらに抵触しないよう、ECサイトや商品紹介ページの情報を制作する際には十分注意が必要です。
その他の法律
その他にもWebビジネスを展開する上で知っておかなければならない法律はあります。
例えばサイト上で健康食品などを販売する場合には、「健康増進法」に則って健康食品の効果効能などを表現しなければなりませんし、「食品表示法」に則って栄養成分やアレルギー表示などの情報を表示する必要があります。
また、オークションサイトや中古品を扱うECサイトを運用する場合には、盗品等の売買の防止、速やかな発見を促すための「古物営業法」を知っておかなければなりません。
法的リスクを回避する最低限のポイント
①定期的な法務チェック
このような法律は公開時に1度確認したら終わりではありません。法律は変わることもありますし、定期的な法律チェックを実施し、最新の法規制に合致しているか確認しましょう。
②外部専門家の協力
法的な問題には専門的な知識が必要です。必要に応じて法律家やコンサルタントと連携し、的確なアドバイスを得ましょう。
法律に十分な注意を払わない場合、Webサイト関連でさまざまな問題が発生する可能性があります。
法的トラブルのみならず、企業の信頼性やブランドイメージにも影響を与える可能性があります。したがって、法的なリスクを事前に認識し、予防策を講じることが重要です。
まとめ
このように、現代ではWebビジネスも法律とは切っても切り離せない関係にあります。もちろん法律に関する問題が発生した場合には専門家の協力が不可欠ですが、Web担当が初めてで知らなかった…ではすまされないのです。
その前段階として、Web担当者には「もしかしたら自社の活動が何らかの法律に抵触しているかもしれない」という疑問を持てるようにしておくといいでしょう。
そのためにも、日頃から自社ビジネスと関係のある法律についてはしっかりとキャッチアップしておくことをおすすめします。
Webサイトに関する疑問、お悩みがあればお気軽にアリウープにご相談くださいね!